漢検1級模擬試験倉庫

「絵本日本外史」から

29-1の文章題Cでは頼山陽の「日本外史」から出題されましたが、「国立国会図書館デジタルコレクション」で「絵本日本外史」というものを発見しました。
文章が比較的平易に訳されていたので、今回出題された部分を載せておきます。→コチラ

…とリンクされても、読みづらいですよね…^^;

ということで、現代仮名遣いに変えてみました。
「続きを読む」をクリックしてご覧ください。



枠内の文字が原文です。
本試験に掲載されている部分を太字で、書き取りの出題箇所を赤字で記しております。
また、「絵本日本外史」の対応する文章を、それぞれの枠の下に記しました。
(恐らくスマホでの閲覧では枠が表示されていないと思いますので、ご注意ください。)

嘗て将軍の近臣を諭す。
大意に謂う、「天下の安危は、将軍の心に在り。宜しく思いを留むべし。
節義を奨め、軽薄を擯け、士民を愛し、賞罰を信にし、賜賚は濫りにする勿れ。
濫りにすれば士則ち怠る。
人を用いるは偏る勿れ。
偏れば則ち国危うし。


或る時公は将軍の近臣に斯(こ)う諭されたことがある。
天下の安危は将軍の心次第であるから、よくよく心をつけなければならぬ。
先ず節義を励まし軽薄を退け、士民を大切にし、賞罰を正しくして、徒に賜り物をしてはならぬ。
もし猥りに賜る時は、怠けて居ても貰えると思って、自然怠惰に流れる。
また人を用うるには、偏頗であってはならぬ。
万一偏頗な処置を取る時には、必ず国が危うくなるものだ。


国の臣有るは、猶木の枝あるがごときなり。枝、偏大なれば則ち其の根を蹶(くつがえ)す。
猶鷙鳥の爪翼有るがごときなり。其の爪翼を愛するは、搏撃を期する所以なり。
臣の用舎、重んぜざるべけんや。


国に臣下のあるのは、丁度木に枝があるようなもので、枝が一つ所に片寄って大きくなると、その重みで却ってその根を倒すようなことになる。
又たとえば肉食鳥に爪や翼があるようなもので、その爪や翼を大事にするのは、他の者を撃ち取ろうと思うからのことで、
まったく家臣の進退は何処までも大切にしなければならぬ。


足利尊氏の高師直に任じ、豊臣秀吉の石田三成を用いる、皆以て人の怨みを取れり。
我も亦誤りて大賀を用いて、殆ど危禍に陥れり。懲毖(ちょうひ)せざるべけんや。


足利尊氏が高師直を任用し、豊臣秀吉が石田三成を任用した。それが為皆後日人の怨みを招くようなことになった。
予も亦嘗て誤って大賀弥四郎を任用し、危うく禍いにかかった位に、実に懲り戒めねばならぬ。


凡そ天下の乱は、主将の欲を縦にして、宰臣の権を専らにするに起こる。民の膏血を浚えて、之を府庫に盈つるを、目して能臣と曰う。是君の為に怨みを蓄うるのみ。
且つ才能を恃む者は、必ず旧法を以て迂拙と為し、動もすれば之を更改せんと欲す。

武田、上杉、今川、大内氏の衰亡する所以は、皆此に由るなり。


元来天下の乱は主将が慾を縦にし、家老が権を専らにするから起こるもので、斯様な場合に租税を重くし、人民の膏血を絞って府庫を満たすような者があれば、之を働きのある善い家来だというが、斯(こ)ういう事をする者こそ、却って君のために怨みを蓄えるようになるのである。
その上才能を恃んでいる者は、必ず旧法に迂闊なもので役に立たぬといい、之を改革しようとする。

武田、上杉、今川、大内諸氏が滅亡したのは、皆之等の事に由るのである。


凡そ政はその旧に因るに在り。
我嘗て陸奥に赴き、源頼朝の榜牌を見る。其の辞に曰く、『国事は皆泰衡の旧に因る』と。吾頼朝の能く東陲を定めしを信ずるなり。


大体政治というものは昔のままにして置くのが肝心である。
予は嘗て陸奥に往って、源頼朝の高札を見たが、その文句に『国事はすべて泰衡の時のままに致し置く』とあったので、予はなるほど頼朝があれだけよく東辺を定めたのも尤もじゃと思った。


介冑の習いは鉄の如く、衣纓の習いは金の如し。金は以て虚飾を為すべく、鉄は以て実用を為す可し。
国家将に衰えんとすれば、必ず衣纓の習いを喜ぶ者有り。新法を建立し、其の華飾を務む。是大蠹なり。
我が家の法度は、皆祖考、耆旧と議して、深く謀り遠く慮りて、其の弊無きを期せり。
変更する所有る勿れ。…


一体武家の風俗は鉄の如きものであり、公卿の風俗は金の如きもので、金は飾りになるだけだが鉄は実用向きである。
されば国家の衰えかかる時は、必ず公卿の風俗を喜ぶ者があり、新法を拵えたり、何でも彼でも上への飾りを第一とするが、それが実は大きな災いとなるのである。
わが徳川家の法度は悉く祖先や故老と相談して、非常に念をいれて定(き)めたもので、少しも弊害のないものであるから、
決して改めたりしてはならない。…




以上ですが、かなりブツ切り出題だったようですね…^^;
やっとなんとなくの意味が分かった気がしますが、「介冑」は出題された内容だけで正しく解釈できるものなのでしょうか…?(-ω-;)ウーン
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コメント

復習用に良いですね

・こんにちは。とても勉強になります。
・今読んでも、(仮令、頭と目がクリアになっていたとしても)“カイチュウの習い”・・・回答できたかどうか自信ナシ。次の“イエイの習い”で出されても、回答は覚束なかったかもしれない・・・。
・ありがとうございました。

  • 2017/07/06(木) 10:13:15 |
  • URL |
  • syuusyuu #8PXT0swg
  • [ 編集 ]

「カイチュウ」も超難問…?

syuusyuu師匠、コメントありがとうございます。

少し調べたところ「介冑之族」「衣纓之族」という語があるみたいですね。
ただ、両方を知らないと対かどうかも分からず、(省略が無くても)文脈から「武家」のことを指している判断しづらい部分だと思うので、相当な難問だったのではないでしょうか…?
単純に「衣纓」の対ということから、"身に纏う"「カイチュウ」だと推測させたかったのかもしれませんが…。

こちらこそありがとうございました。

  • 2017/07/06(木) 11:03:33 |
  • URL |
  • spaceplusKK #hHfHWlpo
  • [ 編集 ]

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