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漢字の正誤の指針について

本試験まで、あと僅か…。
言うまでもないことですが、漢字検定は漢字を正しく書くことが求められます。
初受検の方の中には、自分の書いている字が正解と認めてもらえるのか不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

文化庁ホームページにある「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)(案)」というPDFの「第3章 字体・字形に関するQ&A」から、漢字検定における正誤判定の参考になりそうな部分を抜粋してみましたので、お時間に余裕のある方は是非ご覧ください。

なお、このPDFは、文化庁の文化審議会国語分科会漢字小委員会における「「手書き文字の字形」と「印刷文字の字形」に関する指針の作成」に関する検討結果として去年発表されたものです。
漢検協会の出しているサイト「漢字カフェ」でも紹介されており、内容は書籍化されているそうです。

文化庁ホームページ
「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」
http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/2016022902.html

長くなるので折りたたみます。
「続きを読む」をクリックしてご覧ください。



まず、これは「『常用漢字』に関する指針」なので、「準1級、1級配当漢字についてはどうなのか?」という点について…

Q4 表外漢字の扱い
 この指針に書いてあることは,常用漢字表にはない漢字についても当てはまると考えていいのでしょうか。

 A. 手書き文字と印刷文字との関係や,共通する形については,同じ考え方ができる場合があります。
手掛かりとして参考にしてください。


 この指針は常用漢字表が示す通用字体(通用字体→Q7)の範囲を対象としていますが,その考え方は,常用漢字表にない漢字(表外漢字)を書く場合にも手掛かりになります。
 第2章「明朝体と手書き(筆写)の楷書との関係」では,常用漢字表で掲げている印刷字体を具体的に示し,形の上で共通する部分を持っている漢字ごとに,それらを手書きするときのいろいろな書き方について説明しています。
形の上で共通する部分を持つ表外漢字を書く場合にも,この説明が参考にできます。


ということで、「常用外についても参考にはなる」とのことです。
仮にこのような記述が無かったとしても、そもそも漢検さんが級によって採点基準を変えるようなことはしないでしょう。

続いて、受検者にとって一番気になる点はこちらでしょう…

Q21 漢字の正誤をどう判断するか
 常用漢字表の考え方では,漢字が正しいか誤っているかを,どのように判断するのですか。

 A. 骨組みが過不足なく読み取れ,その文字であると判別できれば,誤りとはしません。

 常用漢字表では,文字の形に関しては,文字がその文字特有の字体を表しているかどうか,その文字に特有の骨組みが読み取れるかどうかを漢字の正誤の判断基準としています。
つまり,別の文字と見分けられなかったり,紛れてしまったりすることがなく,その文字であると判別でき,その文字としての働きをするのであれば,誤りとはしない,という考え方です。
 ですから,漢字の細部のとめ,はね,はらいなどが,字体の違いに影響し,文字の判別に関わってこないのであれば,その有無によって正誤を分けることはしません。
例えば,次のような漢字は,左右のどちらの字形で書かれていても誤りではありません。
公・改
 ただし,次に示すようなものは,字形の違いによって別の文字になってしまうもので,点画の長さやとめはねの違いなどによって,字体が異なり,字種も変わるため,正誤の問題が生じる例です。
未末土士干于
 そのほか,点画の過不足があるような場合には,別の字体であると判断され,正誤に関わることになります。


基準はそう厳しくはないようですね。
気になるのは「その文字に特有の骨組み」という部分でしょうか。
内容は一部重複しますが、「Q15 字体の違いにまで及ばない字形の違い」中に、参考になる記述がありました。

 また,「輸」と「輪」や「永」と「氷」などは,それぞれ字形が似ているものの,骨組みは異なっており,その違いから別の漢字だと判断されます。
さらに,「士」と「土」,「末」と「未」のように,上下にある横画の長さが入れ替われば,別の漢字になるものがあります。
これらは,字形の異なりが,字体の違いにまで及んでいる例です。
 なお,「漢」や「簿」などの字において,構成要素の位置関係やバランスの異なる次のような書き方を見ることがあります。
それぞれ,「漢」,「簿」であると読み取ることは可能ですが,骨組みが異なっていると考えられます。
各種の試験など,正誤の判断の対象になるような場合には,このような形で書くことは避ける方が良いでしょう。
危険な書き方


「骨組み」について、なんとなくは分かるでしょうか。
後半部分に関していえば、常用外だと「梁」の「氵」が大きくなってはみ出る、などは気を付けたいところです。

次は、「崩し字」について参考になりそうな部分を…

Q29 行書のような書き方
 例えば,急いでメモを取るときには,「口」を「口(崩し)」のように書いてしまうこともあります。
そのような手書き文字についてはどのように考えればいいのでしょうか。

 A. 楷書の中には,行書に近い書き方をするものがあります。
「口」という文字の骨組みが認められるのであれば,誤りとするのは行き過ぎでしょう。


 当指針では,手書きの楷書字形を対象としています。
楷書では文字の1画1画をはっきり書く習慣がありますから,「口」を楷書で書く際には,1画ずつをはっきり書く方が望ましいでしょう。
 しかし,実際の文字の運用においては,急いで書こうとするような場合など,点画が続いてしまうのは自然なことでもあります。
点画が続くように書かれる文字の中には,社会生活の中で用いられることのある「行書」や「草書」などの書体によるものもあります。
読む人に配慮した丁寧な書き方が望ましいことは言うまでもありませんが,次に挙げるような行書に近い書き方のものもあります。
口口口
 上記のような行書に近い書き方の楷書においても,「口」という文字の骨組みを読み取ることができ,読み誤るおそれはありません。
正誤の判断が必要になる場合にも,このような字を誤りであると考えるのは行き過ぎでしょう。
 なお,メモに書かれる「口」が「〇」のように見えるような場合があります。
書く人自身のためのメモとして本人だけが読み取れればいい場合や,友達同士の手紙のやり取りに用いるような場合であればかまわないとも言えますが,公的な場面で,他者との情報交換に用いるのは望ましくありません。
また,「〇」からは「口」の骨組みは読み取りにくいため,正誤の判断という点でも問題があると考えられます。


やはり、「骨組み」が基準になるようですね。
ただし、漢検協会の出している「採点基準」には「くずした字や、乱雑に書かれた字は採点の対象外」とあるので、「崩し字」に関してはこの指針より厳しめに採点される可能性もあります。

他に気を付けたいものの例を一つ挙げておきましょう…
(ここに出てくる「Q30」は「いわゆる書写体(筆写体)の扱い」がテーマです。)

Q31 現在もよく使われる書写体(筆写体)の扱い
 「四」を「四(避けた方が良い書き方)」,「西」を「西(避けた方が良い書き方)」のように書いた字をよく見掛けます。
このような字の正誤は,どのように判断すればよいでしょうか。

A このような書き方も,いわゆる書写体(筆写体)に分類されます。
日常的に使うのは問題ありませんが,正誤の判断の対象になるような場合には避けておくべき書き方でしょう。

書写体(筆写体)(→Q30)の中には,現代の日常生活においても,よく見掛けることのある書き方があり,「四(避けた方が良い書き方)」,「西(避けた方が良い書き方)」は,その代表的な例です。
これらは,読み間違えられるようなことが考えにくいこともあり,実際に,広く用いられています。
ふだん,このような書き方を用いたからといって,問題にする必要はないでしょう。
 ただし,字の骨組み,という観点からすると,同じ字体であるとは言い難いところがあります。
例えば,手書きに用いられる「四(避けた方が良い書き方)」は,「署」や「罰」の「罒」に,「西(避けた方が良い書き方)」は「票」や「要」などの「覀」に似た形になりますが,「署」や「票」の上の部分を「四」や「西」のように書くことはありません。
「四」と「四(避けた方が良い書き方)」,「西」と「西(避けた方が良い書き方)」は,字体としては,別のものであると考えるのが適当です。
 したがって,正誤の判断の対象になるような場合には,「四(避けた方が良い書き方)」,「西(避けた方が良い書き方)」という形で書くことは避ける方が良いでしょう。
また,公的機関等の窓口業務においても,これらの書き方は「四」,「西」とは区別されています。


これは気をつけたいですね。
特に、「竇」(標準字体)の字は、メイリオフォントで、と表示されてしまいますが、こちらは辞典には記載されていないので、気を付けた方が良いかもしれません。
(特に、ツイッターは「メイリオ」だと思うので、使用されている方はお気を付けください。)

また、「罒」と「皿」も、きっちり判別できるように書いた方が良いでしょう。
「皿」の場合、両端のはみ出た部分の片方でも、ウッカリ消してしまわないようにしたいですね。
ちなみに、以前にも紹介しましたが、以下の字は「心」の下が、「罒」ではなく「皿」です。
濘獰檸嚀

最後に「正しい字」と「整った字」の違いに関して2つ…

Q35 整っていない字を,正しいと言えるのか
 漢字のテストなどで,整っているとは言い難い読みにくい字で書かれていても,誤りではないと言えるのでしょうか。

 A. 文字の整い方は,原則として,正誤の判断とは別の評価です。
評価対象の字形が読みにくいとしても,その漢字の骨組みが認められるのであれば,誤りとは言えないでしょう。


 漢字の正誤は,その漢字の骨組みが読み取れるか読み取れないかという,客観的な観点に基づいて判断されるものです。
 手書きされた文字が整っているかどうかという評価は,評価する人の個人的な感覚や情緒によって変わることがあります。
また,「整っている」,「やや整っている」,「やや乱れている」,「乱れている」といった段階的な評価や,「こちらの方が整っている。でも,あちらの方がもっと整っている。」といった相対的な評価になる場合もあります。
同様の観点によるものとして,丁寧であるか,美しいか,巧みであるかなどの評価も挙げられるでしょう。
これはいずれも,字体が読み取れるか否かのどちらかに振り分ける正誤の判断とは,別の次元の評価であると考えられます。
 書かれた漢字の正誤を判断する際には,字形の整い方が十分でなく,丁寧に書かれていない場合にも,あるいは,美しさに欠け稚拙に書かれている場合にも,その文字がその文字の字体の枠組み内にあり,備えておくべき骨組みを過不足なく持っていると読み取れるのであれば,誤っているという評価はできないでしょう。
 ただし,書かれた文字の字形が整っていない場合,その度合いによっては,ある線を境に漢字の骨組みが読み取れなくなることがあるかもしれません。
そのような場合には,誤った漢字として判断されるおそれがありますから,注意が必要です。


Q36 どのような字形で書いてもいいのか
 雑に書かれている字や十分に整っていない字であっても,字体が読み取れさえすれば誤りではないということは,どのような字形で書いてもいいということでしょうか。

 A. そうではありません。読む人を気遣って,整った読みやすい字形で書くように配慮することは大切です。
ただ,正誤の判断とは別の問題である,ということです。


 文字によるコミュニケーションでは,その字であることが正しく伝わるように書いてあることが必要です。窓口で記入する書類などに,「楷書で丁寧に書いてください。」といった注意書きが見られることがあるように,漢字による情報伝達をより円滑なものとするためには,読む側への配慮に基づき,意図したとおりに正しく読み取ってもらえるよう書く必要があります。
そのような場合には,整った読みやすい字形で,丁寧に書くよう努めるべきです。
 また,「文化としての手書き」という観点から言っても,美しさや巧みさに配慮して文字を書くことが欠かせない場合があるでしょう。
漢字に関わる検定などにおいても,それぞれの目的によっては,正誤とは別の評価や価値付けが重視されることがあるかもしれません。
 したがって,字体が読み取れる字であれば,どのような書き方をしてもよいということを言おうとしているのではありません。
整い方,丁寧さ,美しさ,巧みさなどに配慮して文字を書くことが大切な場合があることを踏まえた上で,しかし,これらの評価や観点は,正誤の判断とは別のものなので,混同せず区別して考えましょうというのが,当指針の考え方です。


抜粋は以上です。

なお、枠内が引用部分ですが、読みやすくするために、改行位置を変更するなどの調整を行っております。
また、PDFに取り込まれた画像については、拡大率125%で表示させたものを画像として取り込んで、表示させています。
こちらも漢字どうしの間隔を狭めるなどの調整を行っております。



今回抜粋したのはほんの一部ですので、詳しくは全文をご覧ください。
後半部分の「字形比較表」も参考になると思います。(PDFだとちょっと見づらいですけど…^^;)

漢字の字形に関して、(勿論標準字体に沿う形で書くに越したことはありませんが、)そこまで細かく気にする必要が無いことがお分かりいただけたと思います。
多少、「字形」に関する不安は解消されたのではないでしょうか?
綺麗に書くことは大事ですが、正誤は「骨組みが判別できるかどうか」という点に大きく依るということですね。

しかし、逆に言えば、どれだけ綺麗な字を書いたとしても、きちんと骨組みを判別しきれない部分があれば不正解になる可能性があるので、その辺りは気を付けた方が良さそうです。

"私の考える"危険な例を1つ挙げておきます。

觴(危険)

こちらの「觴」の字は、バランスが取れている綺麗な字だと思いますが、採点する上で"危険"な箇所がお分かりになるでしょうか?

気になるのは「角」の縦棒だと思います。
「角」の縦棒を突き抜けてはいけない、と小中学校でも教えているのではないかと思いますが、上の字のようになってしまうと、「ク」を除いた部分が「用」に近づいてしまい、「正しい骨組みだと判別できない」状態と言えると思います。

もう1点、危険な箇所があります。
「日」が下の線に近づきすぎている点です。
「觴」の旁(つくり)には、(本来の漢字の分け方とは異なりますが、)部分的に見ると「旦」という字が含まれていますが、これが「且」に近づいてしまっています。
これも、「正しい骨組みだと判別できない」状態と言えると思います。

漢検辞典の「(タン)」の項目には「『疽(ソ)』は別字。」、「(ショ/ソ)」の項目には「『疸(タン)』は別字。」とあります。
正直、辞典の大きな字を見る限り、そこまで同じ字だと勘違いしそうには思えない(他にもっと勘違いしそうなものがあるように思う)のですが、もしかしたらこれは手書きの際に似てしまうことを注意しているのかもしれません。
(ちなみに、「姐(あね)」にも「『妲(ダツ)』は別字。」とあります。)

漢検1級の場合、画数の多い漢字が多数出題されますが、画数が多いということは「骨組み」も多いということになります。
また、画数が多いとどうしても、稠密な字になってしまうので、「判別のしづらさ」も増します。
画数が増えれば、「不正解」とされる可能性が格段に上がるということなので、画数の多い字には細心の注意が必要だと言えるでしょう。

対策としては…

・稠密な字にならないように、出来るだけ大きく書く
・本来離れているはずのパーツがくっついて一つのパーツに見えてしまっていないか確認する
・(字の一部や隣の欄の字を消した際などに)大事な骨組みの一部が消えてしまっていないか注意する

といったところでしょうか…。

さて、注意点ばかりだと、折角解消されかかった不安がまた戻ってきそうなので(笑)、「字形比較表」にあった「こんな字形でもOK」という例をいくつか並べておきたいと思います。(ア行~カ行の漢字のみ)

以逸印羽園
奥往華化架
芽瓦冠監逆橋
均隙兼航

あっ、わざと採点者を悩ませるような字体を書くのはやめましょう(笑)
繰り返しにはなりますが、あまり情報を出さない漢検さん(苦笑)が、「くずした字や、乱雑に書かれた字は採点の対象外」とだけはしっかりホームページに載せていますので、丁寧に書くに越したことはありません。
なお、「ちゃんと注意して書いたのに不正解にされた!」という苦情は受け付けておりません。 (←あっ、最後に逃げた(笑))
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コメント

書き取り緊張します

紹介してくださったPDFの資料など、いろいろ拝見させていただきました。
書き取りでは、うっかり違う漢字になっていないかチェックしながら書き取りしていきたいと思いました。前回の本試験では間違いの無いようにと、いつもよりやや大きめに漢字を書きましたが、緊張感もあってか、とてもへたくそな字になってしまったかなーと反省しております。字のうまいへたの話ではありませんでしたね(笑)

漢字の表示に関してですが、弊ブログの表示では「竇」の表示は大丈夫なようでしたが、瀆の字の四のところがちょっと異なる形(メイリオフォントの竇の四の形?)になってしまうようでした。なんとかフォントを変更したりできればと思います。
大変参考になりました。ありがとうございました。

  • 2017/01/30(月) 19:48:16 |
  • URL |
  • asatori #LTBvYwDU
  • [ 編集 ]

「頭」がズタズタ…(汗)

asatoriさん、コメントありがとうございます。
「耳」についてコメントを戴いた際に、資料の第3章に興味深い内容が沢山見つかったので、今回の記事で引用してみました^^

書き取りのウッカリはたまにやらかしますね(汗)
正誤については「骨組み」が重要だと書きましたが、「骨組み」をしっかりアピールするように書くことでウッカリも減らせるかも…?と思いました。
小学生の頃に、「頭」の字を「いちくちそいち、いちのめは」(一口ソ一、一ノ目ハ)と覚える語呂合わせを聞いたことがあるのですが、こういった覚え方はある意味「骨組み」を理解する上では理想の覚え方なのかもしれません。
偏も旁もズタズタになってしまっていますけど(苦笑)

漢字の表示についてですが、貴ブログも「MS ゴシック」だと思われるので、「瀆」も大丈夫ではないでしょうか…?
文字が小さいと潰れてしまって「罒」のように見えることがあるので、拡大して確認してみてください。
ちなみに、いくつかのフォントを調べてみましたが、「罒」になっている「瀆」は見つかりませんでした。

こちらこそありがとうございました。

  • 2017/01/30(月) 20:44:51 |
  • URL |
  • spaceplusKK #hHfHWlpo
  • [ 編集 ]

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