今回は(一)読みの解答・解説です。
未挑戦の方は見てしまわないようご注意ください。
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◇解答
(一)
1.しゃあく
2.ふこ
3.せきがん
4.てきとう
5.ほせつ
6.にゅうぶ
7.けいぼく
8.あぼう
9.せんせん
10.とうぼう
11.こうすい
12.はいふ
13.さん
14.りょうち/りゃくち
15.せんおう
16.いっし
17.いび
18.すいさい
19.きょうしょく
20.あいこう/わこう
----------------------------
21.そそ
22.すえつき
23.あらき/[きじ]
24.す
25.さる
26.や/[なや]
27.しぎわな
28.はずかし
29.しきみ
30.おご
◇解説
(一)音読み
複数の音読みがある漢字を多く出題しました。
中には読み分けの必要でない漢字もあったので、無駄に悩まれた方もいらっしゃるかもしれません(笑)
では、順に触れていきます。
1.土木の功、赭堊の色、巧を遺す無し。(答:しゃあく)
「列子」の一節から。
「白堊(はくあ)」(=「白亜」)の「ア」音は慣用音なので、「堊」は「アク」音で読むのが無難だと思います。
2.枹鼓を取ること急なれば其の身を忘る。(答:ふこ)
「史記」の一節から。
(原文「枹鼓を援ること急なれば則ち其の身を忘る」)
「枹(フ/ホウ)」は読み分けが記されている辞典もありますが、「ホウ」音は深追い気味ですかね…。
少なくとも「フ」音の方が重要なのは間違いありません。
3.冷たい石龕の内に急に灯がともされた。(答:せきがん)
中島敦「妖氛録」にある長文の一部分です。
4.魯仲連は奇偉俶儻の画策を好む。(答:てきとう)
「史記」の一節から。
(原文「魯仲連は斉の人なり。奇偉俶儻の画策を好みて、…」)
「俶儻」は有名な読み分けの語ですね。
(他の例外もあるかもしれませんが、)この熟語以外では「俶」は「シュク」音で読めば良いと思います。
ちなみに「魯仲連」は、四字熟語「仲連蹈海」の「仲連」のことのようです。
5.子敖に従いて来るは徒に餔啜するのみ。(答:ほせつ)
「孟子」の一節から。
(原文「子の子敖に従いて来るは、徒に餔啜するのみ」)
「啜(セツ)」音は「歠(セツ)」とセットで覚えておくと良いと思います。
6.修験者が列になって入峰する。(答:にゅうぶ)
呉音の「峰(フ)」を出題したつもりでしたが、もしかしたら「フ」の連濁ではなくて、慣用音の「ブ」だったかもしれません…。
もしそうなら悪問と言えるので申し訳ないです🙇💦
7,8.鶏鶩は堂壇に満ち、蛙黽は華池に游ぶ。(答:けいぼく、あぼう)
「楚辞」の一節から、面倒なので二問(笑)
「鶩」は「あひる」の意味で「ボク」、「駆ける」の意味で「ブ」(配当外の「騖」に通じる)ですね。
「黽」も「あおがえる」の意味で「ボウ」、「つとめる」の意味で「ビン」ですが、こちらは共に過去問で出ていたと思います。
9.生、為人孱孱たる小丈夫のみ。(答:せんせん)
吉田松陰「幽囚録」の一節より。
過去に「孱顔(さんがん)」が出題されたときは界隈が騒然としましたが、結果的には「せんがん」も正解となりましたね。
全て「セン」で読んでおけば良さそうです。
10.正に頂子に中り、兜牟桜絶えて傾く。(答:とうぼう)
「東国通鑑」の一節より。
(原文「正に頂子に中る。兜牟桜絶えて側く。」)
共に準1級漢字で、やや難問だったでしょうか。
「兜巾(ときん)」「兜率天(とそつてん)」の「ト」音や、「釈迦牟尼(しゃかむに)」の「ム」音は仏教用語なので呉音ですね。
11.侵攻の勢いを無くし、交綏状態となる。(答:こうすい)
最近本試験で出ていたのに気づかずに出してしまいました(苦笑)
ちなみに、「交綏」は書き問題で出てもおかしくない熟語だと思っています。
12.叩頭拝俛して窮状を哀訴す。(答:はいふ)
「俛」の読み分けも過去問にあったと思います。
ここでは「ふせる」意味で「フ」です。(「俯」に通じる。)
13.七日火食せず、藜羹糝せず。(答:さん)
「荘子」の一節から。
四字熟語の「陳蔡之厄」の場面で、他にも記載があるようです。
大元がどこなのかはよく分かりません(苦笑)
「糝」は「糂」としているものもあり、いずれにせよ読みは「サン」です。
「糝(シン)」「糂(ジン)」は、「糝薯(しんじょ)」「糝粉(しんこ・重箱)」「糂粏(じんだ)」のための慣用音でしょうね。
14.掠笞数百、是を以て高祖を逃れしむ。(答:りょうち/りゃくち)
「史記」の一節から。
(原文「掠笞数百、終に是を以て高祖を脱れしむ」)
「掠」の読み分けはハッキリとはしていないようですが、「掠奪」=「略奪」でも分かる通り、「かすめる」意の時は「リャク」で正解になるはずです。
逆に、「むちうつ」意の時は「リョウ」音が無難そうですが、今回のように両方の読みが見つかるものもありますね。
15.稟請には執行者の簽押を要す。(答:せんおう)
特に解説することはありません。
16.壱是に皆身を修むるを以て本と為す。(答:いっし)
「大学」の有名な一節から。
知らないと超難問ですが、漢検辞典の「壱」の項目に載っていたので、注目していた人も多そうです。
17,18.扶輿猗靡として、翕呷萃蔡たり。(答:いび、すいさい)
司馬相如の「文選(子虚賦)」の一節から、またしても横着して二問(笑)
一級漢字だらけの文章ですね💦
19.敬神家の矜式となり勤王の木鐸となる。(答:きょうしょく)
徳富蘇峰「吉田松陰」の一節より。
(原文「敬神家の矜式となり、また勤王の木鐸となる」)
「式」の読みは、調べた範囲では全て「ショク」でした。
意味による読み分けではないので厄介ですが、書きで出てもおかしくない語ですので、熟語ごと覚えておいて損は無いと思います。
20.高懐衰薄を矯め、雅音哇咬を変ず。(答:あいこう/わこう)
高青邱の詩の一節より。
「哇」の読みは3つあって何だかよく分かりませんが(苦笑)、私はとりあえず「アイ」で読むことにしています。
また、「咬」を「オウ」で読んでいる辞典もあるようですが、ややこしくなるので解答には載せませんでした。
(一)訓読み
こちらも複数の読みがあるものが幾つか、そして準1級漢字や常用漢字も含め、半数ほどが第二版の訓の難問でした。
21.其は巌に浪の瀉ぐが如く懸かれり。(答:そそ)
尾崎紅葉「金色夜叉」より。
(原文「彼を絡える文は猶解けで、巌に浪の瀉ぐが如く懸かれり」)
「そそぐ」「すすぐ」の読みで混乱される方も多いと思います。
「そそぐ」には「すすぐ」の意味もあるので、全部「そそぐ」で妥当な気もしますが、辞典に記載の無い訓を書くのは不安ですよね。
混乱を防ぐには、まずは「洗う」意味があれば「すすぐ」、それ以外が「そそぐ」と読み分けるのがオススメの方法です。
例外は「灑」(そそぐ・あらう)ですが、これは「水を注いで洗う」というニュアンスだと思うので、これだけは別で覚えてください。
22.神酒を注いだ陶坏を饌える。(答:すえつき)
ポイントは常用漢字の「陶」の方でしょうか。
「陶器」は湯桶読みで「すえき」とも読めますが、これは歴史の教科書などで見る「須恵器」と同じものですね。
23.敦として樸の若く、曠として谷の若し。(答:あらき/[きじ])
「老子」の一節から。
(原文「敦として其樸の若く、曠として其谷の若く、…」)
「道」に関する話の一部分で、この文は「微妙玄通」の出典でもあります。
同じ旁で、木偏だと「樸(あらき)」、玉偏だと「璞(あらたま)」なので覚えやすい訓ですね。
24.三王も邁ぐべし、五帝も越ゆべし。(答:す)
「魏志」の一節から。
文語体の文章ですが、「邁ぐ」は「べし」の前なので終止形です。
これの口語体は活用によって、「邁ぐ」「邁ぎる」「邁げる」の3つが考えられます。
第二版の訓なので口語体の形でも難問ですが、このように考えることで、答えが分かることもあると思います。
25.狙を愛し、之を養いて群を成す。(答:さる)
「烈士」の一節から。
「朝三暮四」の故事からで、教科書で見たことがあるという方もいらっしゃるかもしれませんね。
第二版の訓ですが、「狙猴(=猿)」や「狙公(=猿回)」といった熟語からも推測可能だと思います。
26.数烟塵に遇いて戎役に疚み労れり。(答:や/[なや])
「続日本紀」の一節から。
漢検辞典では「烟」は「煙」の異体字扱いですが、本試験の文章題の文中で「烟」がそのまま使われていたこともあったので、こちらでも変更せず使用しています。
27.宇陀の高城に鴫羂張る。(答:しぎわな)
「古事記」の一節から。
「わな」と「なわ」で混乱する方もいらっしゃるかもしれませんが、「罒」の繋がりで「罠」と同じ読みです。
28.夙に興き、爾の所生を忝むる無かれ。(答:はずかし)
「詩経」の一節から。(「孝経」にも引用アリ。)
(原文「夙に興き夜に寐(い)ね、爾の所生を忝むること無かれ」)
「夙興夜寝(=夙興夜寐)」の出典です。
「忝むる」は後ろに「無かれ」があるので連体形で、口語体が「忝みる」か「忝める」であることが分かります。
いずれにせよ、「忝」と「辱」の訓読みが同じであることを知っていれば、そう難しくはないですね。
ちなみに、「忝(かたじけな)む」という動詞も存在しますが「かたじけなむる」と活用することはありません。
29.入口の梱に膝をついて応対する。(答:しきみ)
「梱」の訓は複数あるので、前後の文を見なければいけない問題でした。
ちなみに、「しきみ」と読む訓は複数ありますが、別物が多いので混乱しないよう注意が必要です。
梱、壼:門戸の仕切り(=閾、閫)
樒、梻:木の一種
軾:車の前の橫木
30.如し其の道ならば、以て泰ると為さず。(答:おご)
「孟子」の一節より。
(原文「如し其の道ならば、則ち舜、尭の天下を受くるも以て泰ると為さず」)
「泰」の一般的なイメージとは懸け離れるので、推測は難しいですね。
「汰」も音読み「タイ」、訓読み「おご(る)」の組み合わせがあるので、セットで覚えておくと良いと思います。
長くなりましたが、以上です。
明日は(二)書き取りと(三)語選択の解答・解説を公開します。
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