漢検1級模擬試験倉庫

文章題書き取り問題その20

文章題書き取り問題(選択形式)です。

語群(1~5):[いんかえいまいきゅうりせっしょうそうまい]

◇今ここに会社を立てて義塾を創め、同志諸子、相ともに講究切磋し、もって洋学に従事するや、事、もと私にあらず、広くこれを世に公にし、士民を問わずいやしくも志あるものをして来学せしめんを欲するなり。
 そもそも洋学のよって興りしその始を尋ぬるに、昔、享保の頃、長崎の訳官某等、和蘭通市の便を計り、その国の書を読み習わんことを訴えしが、速やかに(1.)を賜りぬ。すなわち我が邦の人、横行の文字を読み習うるの始めなり。
 その後、宝暦明和の頃、青木昆陽、命を奉じてその学を首唱し、また前野蘭化、桂川甫周、杉田鷧斎等起り、専精してもって和蘭の学に志し、相ともに切磋し、おのおの得るところありといえども、洋学(2.)の世なれば、書籍はなはだ乏しく、かつ、これを学ぶに師友なければ、遠く長崎の訳官についてその疑を叩き、たまたま和蘭人に逢わばその実を質せり。けだしこの人々いずれも(3.)卓絶の士なれば、ひたすら我自り古を作すの業にのみ心をゆだね、日夜研精し寝食を忘るるにいたれり。あるいは伝う、蘭化翁、長崎に往きて和蘭語七百余言を学び得たりと。これによって古人、力を用ゆるの切なると、その学の難きとを察すべし。その後、大槻玄沢、宇田川槐園等継起し、降りて天保弘化の際にいたり、宇田川榛斎父子、坪井信道、箕作阮甫、杉田成卿兄弟および緒方洪庵等、(4.)輩出せり。この際や読書訳文の法、ようやく開け、諸家翻訳の書、陸続、世に出ずるといえども、おおむね和蘭の医籍に止まりて、かたわらその(5.)、天文、地理、化学等の数科に及ぶのみ。ゆえに当時、この学を称して蘭学といえり。
(福沢諭吉「慶応義塾の記」より)

<ヒントの表示(1~5)>

語群(6~10):[かくちかっかこうかんはいたいほうこん]

◇けだしこの時といえども、通商の国は和蘭一州に限り、その来舶するや、ただ西陲の一長崎のみなれば、なお書籍のとぼしきに論なく、すべて修学の道、はなはだ便ならざれば、未だ(6.)の憾みを免れず。然るに嘉永の季、亜美利駕(アメリカ)人、我に渡来し、はじめて和親貿易の盟約を結び、またその好を英、仏、魯等の諸国に通ぜしより、我が邦の形勢、ついに一変し、世の士君子、皆かの国の事情に通ずるの要務たるを知り、よって百般の学科、一時に興り、おのおのその学を首唱し、生徒を教育し、ここにいたりてはじめて洋学の名、起これり。これあに文学の一大進歩ならずや、おもうに一事一運の将に開かんとするや、進むに必ず漸をもってす。たとえばなお楼閣にのぼるに階級あるが如し。すなわち天保・弘化の際、蘭学の行われしは、宝暦・明和の諸哲これが初階を成し、(7.)、洋学のさかんなるは、各国の通好によるといえども、実に天保・弘化の諸公、これが次階をなせり。然らばすなわち吾が党、今日の盛際に遇うも、古人の賜に非ざるをえんや。
 そもそも洋学のもって洋学たるところや、天然に(8.)し、物理を(9.)し、人道を訓誨し、身世を営求するの業にして、真実無妄、細大備具せざるは無く、人として学ばざるべからざるの要務なれば、これを天真の学というて可ならんか。吾が党、この学に従事する、ここに年ありといえども、わずかに一斑をうかがうのみにて、百科(10.)、つねに望洋の嘆を免れず。実に一大事業と称すべし。
(福沢諭吉「慶応義塾の記」より)

<ヒントの表示(6~10)>



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コメント

結構時間かかった

こんにちは
木曜日はおっしゃる通り難しかった。

なかなか興味深い熟語や言い回しが沢山ありました。

・横行の文字
 これは「おうぎょう」と読むのでしょうかね。
・首唱
・疑を叩き
・古を作す
 作古という熟語あるかな~と調べたら「自我作古」出てきました~
・隔靴の憾み・・これ出来なかった。
・望洋の嘆

これぐらいの難易度の文章のが楽しめました~

ありがとうございました。

  • 2020/01/23(木) 09:54:21 |
  • URL |
  • rikuroku #-
  • [ 編集 ]

深い読み込み

rikurokuさん、コメントありがとうございます。
色々と細かく調べられたようですね。

・横行の文字
原文には「おうこう」とルビがありました。
「行(ぎょう)が横向き」という解釈をされたのだと思いますが、恐らくは「蟹行文字」と同じような解釈の表現だと思います。

・首唱
出題候補にはありましたが、超難問になりそうだったので出しませんでした。

・疑を叩き
調べてもこの文章しか出ませんね💦
あまり一般的な表現ではないのかもしれません…。

・我自り古を作す
原文は返り点を含んで、「自レ我作レ古」という形でした。
調べていて気付きましたが、漢検辞典にもある表現ですね。
https://www.kanjipedia.jp/kotoba/0000735800

・隔靴の憾み
鴎外の作品にもこの表現がありました。
「隔靴の歎」「隔靴の思い」などといった使い方もあるようです。
勿論「隔靴搔痒の~」という形もあります。

・望洋の嘆
こちらは最近出題したばかりなので出しませんでした。
この文章だと「亡羊」でも当てはまってしまいそうですしね…。

ちなみに、原文はコチラです↓
https://www.aozora.gr.jp/cards/000296/files/47151_27963.html

この難易度でも楽しいと感じられるのは素晴らしいですね。
こちらこそありがとうございました🙇

  • 2020/01/23(木) 11:41:09 |
  • URL |
  • spaceplusKK #hHfHWlpo
  • [ 編集 ]

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