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1.我が絳泥色の帽子も亦、この壁上にあり。…(中略)…禅房の一室夜いたくも更け渡りて孤灯沈々たる時、我ひとり冷えたる苦茗を啜って、苦吟又苦吟、額に汗を覚ゆる惨憺の有り様を、最も同情ある顔付きして柱の上より見守りたるもこの帽子なり。…(中略)…或る時は村内の愛弟愛妹幾人となく引きつれて、夏の半ばの風和(なご)き夜な夜な、舟綱橋あたりに蛍狩りしては、団扇の代理つとめさせられて数知れぬ流蛍をセイキンしたる功労もこれにあり。
2.若し道人意に外典を楽(ねが)わん者は、茂士孝廉宜しきに随って伝授せよ。若しセイキン黄口の文書を志し学ぶ有らば絳帳先生、心慈悲に住し、思い忠孝を存して貴賤を論ぜず、貧富を看ず、宜しきに随って提撕し、人を誨ゆることを倦まざれ。
<ヒント> 1.「蛍狩り」で「帽子」をどう使ったか。 2.「文書を志し学ぶ」者。
3.島内を一巡して見たが、島中、椰子と蛸の樹と麺麭の樹とがギッシリ密生している。…(中略)…支庁の人の案内でマーシャルきっての大シュウチョウカブアを訪ねた。カブア家はヤルートとアイリンラプラプとの両地方に跨がる古い豪家で、マーシャル古譚詩の中には屢々出て来る名前だそうである。
4.唯一心に尋ねるところは時趣、もとむるところは妙文、観じ来れば古往今来の詩遂に是漆桶不会、罵り去れば錦心シュウチョウの客も未だ抜舌の罪囚たるに過ぎず。
<ヒント> 4.ある四字熟語がヒント。また、「チョウ」も「心」の意。
5.史あにそれ言い易からんや。事は数千載の上下と数万里の東西とに蟠延し源は深く人心の幾微に発し細やかに社会の深淵に伏す。事理を剖析し状情を探究し以て因果の在る所を解明す。まことに学術上の最難事たり。而もケイコツに之を論断し苟且に之を言説して顧みず揚々として得色あるが如きものあるはそもそも何の心ぞ。
6.死体はおそろしく切りさいなまれていた。左のケイコツはひどく折れていた。全身がおそろしく傷つけられ変色していた。この傷害がどうして加えられたかはわからない。
<ヒント> 5.「史」(=歴史)は「学術上の最難事」なので、「ケイコツ」に「論断」したり「苟且」に「言説」したりできるものではない。 6.「左の」とあるので、体に左右一対あるパーツ。
7.君、実際あの女は、仏を迷わした女なんだが、いいか、まあ、さしさわりのないその辺の京都名代の大寺の住職に毒水禅師というのがあったと思い給え、これは近代の名宗匠で、会下にカシャクする幾万の雲衲を猫の子扱い、機鋒辛辣にして行持綿密、その門下には天下知名の豪傑が群がって来る、その大和尚がとうとう君、あの女にやられてしまったんだぜ。
8.最初の頃、妹は殆ど三日にあげず手紙を寄越し、その中には文字のあまり達者でない父の代筆も再三ならずあった。彼はそれを見る度見る度に針を吞むようなカシャクの哀しみを繰り返す許りであった。身を切られるような思いから、時には見ないで反古にした。
9.然るに時勢の進歩は次第に国民の覚醒を促し、爾来十年ほどというものはいわゆる政治熱勃興の時代で、一方には政論家が到る処で演説会を催し自由民権の思想を鼓吹する。他方では輿論の指導者を以て任ずる人々が、新聞を発行して盛んに政府の専制を攻撃する。苟も政府の行動にして一点の過ちあればカシャクなくこれを指摘し、機会あるごとに国民の権利を主張した。
<ヒント> 7.「雲衲」は「修行に励む禅僧」。「カ」は慣用音。 9.「カシャク」の無い厳しい姿勢で「指摘」や「攻撃」をした。
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1.生禽/生擒
2.青衿/青襟
(2.「青衿」は「青」、「黄口」は「黄」、「絳帳」は「絳(あか)」と、色を意識していると思われる対比が文中に見られます。)
3.酋長
4.繡腸
(4.「錦心繡口」の同義で「腸」の形の四字熟語もあります。ちなみに、文中の「漆桶」の読みは「しっつう」です。)
5.軽忽
6.脛骨
7.掛錫/挂錫
8.呵責/呵嘖
9.仮借
(9.「仮借」は否定の語を伴い、厳しく責めるような場面で使われることが多いようですので、「呵責」と間違えないよう注意が必要です。)
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