語群(1~5):[いっか、かそ、けんせき、ぜんだく、ていかい]
◇このとき渠は始めて心着きて驚けり。かかる深夜に人目を窃みて他の門内に侵入するは賊の挙動(ふるまい)なり。われははからずも賊の挙動をしたるなりけり。
ここに思い到りて、白糸はいまだかつて念頭に浮かばざりし盗というなる金策の手段あるを心着きぬ。ついで懐なる兇器に心着きぬ。これ某らがこの手段に用いたりし記念(かたみ)なり。白糸は懐に手を差し入れつつ、頭を傾けたり。
良心は疾呼して渠を責めぬ。悪意は踴躍して渠を励ませり。渠は疾呼の(1.ケンセキ)に遭いては慙悔し、また踴躍の教唆を受けては(2.ゼンダク)せり。良心と悪意とは白糸の恃むべからざるを知りて、ついに迭いに闘いたりき。…(中略)…
かく思い定めたれども、渠の良心はけっしてこれを可(ゆる)さざりき。渠の心は激動して、渠の身は波に盪(ゆ)らるる小舟のごとく、安んじかねて行きつ、還(もど)りつ、塀ぎわに(3.テイカイ)せり。(泉鏡花「義血侠血」より)
◇彼の輩は其の所有の樹園で(4.カソ )を盗む者を捕らうも怒らず、「お前はよい事をした。たんとお持ち下さい」と挨拶す。然るに自分の不在中に盗まるると、大いに瞋って樹一本切り又椰子(5.イッカ )打ち破る。是は盗人を詛うのだという。(南方熊楠「詛言に就て」より)
<ヒントの表示(1~5)>
語群(6~10):[かっちゅう、きけい、せんめい、ちょうしょう、ほうるい]
◇西晋の永嘉五年、張栄が高平の巡邏主となっていた時に、曹嶷という賊が乱を起こして、近所の地方をあらし廻るので、張は各村の住民に命じて、一種の自警団を組織し、各所に(6.ホウルイ )を築いてみずから守らせた。
ある夜のことである。山の上に火が起こって、烟や火焰(ほのお)が高く舞いあがり、人馬の物音や(7.カッチュウ )のひびきが物騒がしくきこえたので、さては賊軍が押し寄せて来たに相違ないと、いずれも俄に用心した。(岡本綺堂「中国怪奇小説集 -捜神後記(六朝)-」より)
◇虎杖の方言歴史に関しては、幸いにして記録の(8.チョウショウ)が存留する。『枕の草子』時代の京都語がイタドリであったことは、かの『枕の草子』の、「杖無くてもありぬべき顔つきを」という(9.キケイ )なる一文章によって熟知せられる。…(中略)…という理由は至って簡明で、現在においてもイタドリとタチヒとは虎杖の日本語として弘い区域に行われ、過去少なくとも千数百年の間、時の影響を受けて変化してはいなかったからである。そうして仔細にその錯綜の跡を検すれば、二語は久しく併存し、その択一は単なる小区域の流行であったことが知れるからである。即ち将来(10.センメイ )せられねばならぬある法則によって、方言はいわゆる古典の時代から、著々として発生しつつあったことが推測し得られるのである。(柳田國男「野草雑記」より)
<ヒントの表示(6~10)>
<解答の表示>
1.譴責
2.然諾
3.低回/彽徊/[低徊]
4.果蔬 (大見出しでない)
5.一顆
6.堡塁
7.甲冑
8.徴証
9.奇警
10.闡明
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