まだ標準解答が出ておりませんので、暫定的な解答を元に書かれているという点にご注意ください。
長文ですので、お時間のある時にでも、目を通していただければ幸いです。
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これまで同様、まずは各問題の難易度を考えてみました。
人に依って難易度の感じ方には差があると思いますが、対策のしやすさ、ミスの出やすさなどを考慮に入れて、飽くまで私個人の判断で決めています。
(先日ツイッターで出したものと同じです。)

特にA,B問題でミスの多い分野が苦手分野ということになると思います。
目標点を全て足しても合格点には届きませんが、とりあえずはそのラインを目標に取り組んでみてください。
逆にもし、A,B問題で共に目標点に達していた場合は、(やりすぎにならない程度に)対策範囲を広げても大丈夫でしょう。
今回も分野ごとに触れていきます。
(一)音読み
今回は、「甄綜」「蟹螯」「蛭螾」「紬繹」「鏗爾」と、準1級漢字と1級漢字を組み合わせた熟語が多かったでしょうか。
1級漢字の音読みは多くの方が対策済みなので、少しずつ準1級の漢字を混ぜて難易度を上げているのかもしれません。
全体を通じて一番の難問は、(別解が認められない限りは)「麕身(きんしん)」だったと思います。
「のろ」の意味では「キン」音とする説明が辞典にはありますが、大漢和のような大きな辞典を除けば、「キン」音のみの熟語はなかなか見つからないため、この読み分けを問うのは少々酷な気もします…。
漱石の文章に出てくる内容を出題したようですが、普通に学習していると対策しづらい難問だったのではないでしょうか。
(一)訓読み
第二版の訓読みが4つ(「欹てて」「蠹む」「疾む」「溺」)、準1級で読み分けの必要な「襖」、常用で文語体終止形の「警む」と、難問要素が多かったと思います。
文章で判断がつきやすかったと思いますが、「諄い」も「くど(い)」「あつ(い)」の読み分けがありましたね。
特に、難問だったのは常用第二版訓の2つです。
まず、「疾む」ですが、これも「や(む)」「にく(む)」の読み分け問題でした。
ちなみに、「にく(む)」の訓は「疾視」「冒疾」といった熟語に対応しているので、併せて覚えておくと良いと思います。
そして何といっても「溺」ですね。
試験直後の記事でも触れましたが、後ろの「まる」が送り仮名ではなく、「放(ま)る」(漢検辞典に無い読み)であることを見抜くのはかなり難しいでしょう。
原文の「尿」(の異体字)を敢えて「溺」と変えて出題しているのも、意地悪な感じですね(笑)
こちらの関連情報としては、音読みの読み分けでしょうか。
今回のような「ゆばり/いばり」の意味では、音も「溺(ニョウ)」(=「尿」)と読む点に注意が必要ですね。
(二)
ほぼ漢検大見出しの範囲で対応可能だったので、超難問があったわけではありませんが、「半夏生」「腎盂炎」「羇旅(歌)」「釈奠」と、専門的なものや一癖あるものが目立っていましたね。
また、「傷痍(軍人)」はどうやら若い世代の方には難しかったようです。
昔は得点を伸ばせる分野でしたが、最近は逆に得点を伸ばすのが難しい分野になってきていると感じます。
この中では「半夏生」が難問と感じられた方が多いようですが、天気予報などで触れられている言葉だと思います。
日常で聞いたことがないと思われている方も、間違えたことをきっかけに、来年以降は耳に入ってくるかもしれませんね。
(三)
「桃夭」「考妣」は大見出しでなく、「栃麺棒」「半風子」は常用熟語で、「稼穡」が唯一の1級大見出しでした。
「栃麺棒」が前回R1-3のダミーでしたが、その対策をしていなければかなりの難易度だったのではないでしょうか…。
幸い全ての語を弊ブログで出していたので、ブログ内を広く対策してくださった方はそれなりに対応できたのではないでしょうか。
特に、「桃夭」「考妣」はひでまろさんのツイート纏め記事で出題されていますので、未対策の方はしっかりと対策することをオススメします。
(四)問1
1級四字熟語を基本として、常用四字熟語が2つなので、スタンダードな出題かと思ったのですが、「家鶏野鶩」が漢検四字熟語辞典の大見出しではなかったようです。
問1でこのような出題がされるのは初めてのことではないでしょうか…?
「家鶏野雉」の類義語としては掲載されていますし、漢検"漢字"辞典の大見出しにはなっているので、まだ対策しやすいものだったとは思いますが、今後は漢検四字熟語辞典の大見出し以外からの出題も気を付けておく必要がありそうです。
(四)問2
何といっても「廃忘怪顚」の出題が驚きでしたね。
消去法で選ぶことはできても、「けでん」という読みを当てるのが厳しかったと思います。
ただ、「怪顚」のみでも同じ意味なので、この熟語を知っていれば正解はできますね。
そういう意味では、四字熟語対策というよりも、普通に語彙を増やしていくことで対策できる問題だったと考えることもできるでしょうか。
残りの問題は全て1級四字熟語なので正解したいところですが、出題文が少し捻った感じで、戸惑うものもあったかもしれませんね。
(五)
過去問全てを調べたわけではありませんが、過去問割合がやや少ないような印象を受けました。
人によっては難化を感じられたかもしれません。
漢検辞典の索引にない「厳器」が難問だったと思います。
最近は索引にない熟字訓が出るのが当たり前になってきましたね。
(六)
今回は音も訓もやや難易度が低めだったでしょうか。
音は(一)と同様に、1級+準1級の「攬轡」が出題されていますね。
訓読みは「闔て」「曬す」が第二版の訓でしたが、前者は送り仮名から候補が絞られ、また、後者は「曬」≒「晒」なので、どちらも比較的推測しやすかったと思います。
(一)の訓が難しかった分、ここで難易度を調整されたのかもしれませんね。
(七)
今回は「蕭瑟」以外が大見出しで、残り9つのうち7つが1級大見出しだったので、前回に比べるとかなり解きやすくなった印象です。
前回は大見出しでない語が半分ほどありましたからね💦
「蕭瑟」に関しては色々と思うところはありますが、まだはっきりしないこともあるので、ここでは触れないことにします。
語選択と同様に、出題された全ての語を弊ブログ内で出していました。
対類の形で出しているものも多かったので、模試や記事の対類問題を対策していれば、それなりに取れたのではないでしょうか。
(八)
こちらも1級漢字関連のものが多かったですね。
出題された部分以外も見ると、「公事」のことわざ以外は1級漢字を含んでいるので、この範囲を対策するだけでも点数が伸ばせることがわかります。
「慈心」のことわざは過去問H18-2でも出ていますが、そのときは「瞋恚」を書かせる問題でした。
手持ちの分だけで良いと思いますが、出題箇所以外が出題されても書けるかどうかをチェックしておくのも対策の一つですね。
「賤蚌」も過去問「明珠老蚌に出ず」の応用でした。
「貴」⇔「賤」の対で推測もできますが、周りの反応を見ていると簡単ではなかったようです。
「公事」は、「クジ」を音読みと思わずに「籤」と書かれた方も多いのではないかと思います。
過去問で「公界」を書かせる問題がありましたが、表外音「公(ク)」を含むものは準1級以下では出しづらいために、1級に回ってくる(?)のかもしれませんね。
(九)書き
今回は比較的解きやすい内容だったと思います。
どの問題も前後に手掛かりがあって、答えの語を知っていれば分かりやすかったのではないでしょうか。
やや分かりにくいのが「横議」だと思いますが、『以謂らく、~と』の部分が、民衆を抑え込もうとする大臣世族の思っていることだと理解できれば、意味はそれなりに取れるのではないかと思います。
前回の文章題で「以謂らく」の読みが出題されましたから、その対策のおかげで理解できたという方もいらっしゃったかもしれません。
「沙門」は、前後の文章に加えて、筆者が「空海」であることもヒントになりますね。
文章題を解くときには、そういった部分をチェックするのも大事だと思います。
(九)読み
この分野としては難易度が高かったと思います。
第二版の読みの「焉に」「係がん」に加えて、「咄」の音訓の判断が難しく、難問でしょう。
その他の問題ではあまり落としたくないところですね。
分野ごとの話は以上です。
全体としては、「易化した」と仰る方が多く、実際に前回よりは易化していると思われます。
ただ、それ以前の回も含めて比較してみると、そこまで簡単だったわけでもなさそうです。
かなり適当な予想ではありますが、平均点は100点行くかどうか、合格率は7~10%といったところでしょうか…?
コロナの影響で受検者も減っているはずですから、そもそも単純な比較で予想できるのかどうかも分かりませんけどね…。
さて次は、弊ブログでどの程度の内容をカバーできていたのかを調べてみました。
今回はかなり広く対応できていたので、カバーできなかったものを挙げたいと思います。
(少し応用すれば正解できると考えたものは、対応しているものとしました。)
読み:「麕身」「蛭螾」「疾む」「溺」「怪顚」「闔て」「咄」「庶幾わくは」「焉に」
書き:「半夏生」「釈奠」「慈心」「吝い」「賤蚌」「公事」「横議」
(太字は2点問題)
計24点分なので、176点分をカバーできていたことになります。
模試や主要な記事(オススメ度がAやBのもの)に限っても160点以上はカバーできているはずですし、逆に参考情報を含めると180点近い範囲になると思います。
合格するのに必要な情報は提供できているはずですので、弊ブログの模試、記事問題、PDFなどを上手く学習に取り入れていただければ幸いです。
それぞれの出題語をどこで対応していたかを知りたい場合は、(PC版表示で)右側にある検索フォームでブログ内の検索ができますので、そちらもご活用いただければと思います。
(勿論、見つけられない場合は質問していただいても構いません。)
最後は、今後の弊ブログでの対策です。
A.音読み
基本的に1級漢字はカバーできているので、深追いはやめておきます。
準1級漢字の出題が増えてきているので、復習も兼ねて少し対策するかもしれません。
ちなみに、「1級+準1級」の形の熟語は「音読み問題」の「その6」~「その9」で扱っています。
苦手に感じる方は「音読み」カテゴリから記事を探して、対策にご活用いただければと思います。
B.訓読み
ある程度対策できていたと思いますので、特別な対策は考えていません。
もし余裕があれば、常用漢字の第二版の訓読みの対策をするかもしれません。
また、純粋な訓読みではありませんが、「庶幾う」のような読みが出されているので、送り仮名のある熟字訓も少しチェックしておきたいと思います。
C.音熟語書き取り
「半夏生」「釈奠」は出題を考えなかった訳ではありませんが、なんだかんだで出していませんでした…。
(二)(三)の出題傾向が変わってきて、線引きがよく分からないのですが、深追いの無いように気を付けながら、少しずつ出していければと思っています。
「横議」のような熟語は、文章題で偶然出てこない限りはなかなか出せないので、対策は難しそうです。
文章題の出題を続けていくことで、少しずつ対策していくしかないでしょうね…。
D.訓読み書き取り
諺の「吝い」の書き出題は盲点でした(読みでは出題しています)が、完璧は無理なので、これは仕方がないということにしておきます。
E.四字熟語
問1に関しては、「家鶏野鶩」のように、漢検四字熟語辞典の大見出しでないものを深追いにならない範囲でチェックしてみようと思います。
問2に関しては、漢検四字熟語辞典に無いものの出題は既にしていますが、「廃忘怪顚」は傾向がかなり変わりましたね。
こちらは深追いになりそうなので、あまり気にしない方がいいかもしれません…。
今後リピーター模試を作るときには参考にしたいと思います。
F.故事成語
上でも触れたとおり、重要なのは1級漢字を含むものです。
「特定のことわざ辞典で1級漢字を含む項目の一覧があったら、多くの人にとって有益な資料になるだろうな」とか、
「複数人で協力・分担すれば、短い期間でこのような『1級ことわざ表』が作れそうだな」とか、
「誰かがリーダーシップを発揮して、作り上げてくれないかな」
といった他力本願な考えが頭を巡っているところなのですが…果たして忖度は発動されるでしょうか?(←8ヶ月越しの天丼(笑))
長くなりましたが、記事は以上です。
特に難問に関する話をしてきましたが、重要なのは簡単な問題を着実に正解することです。
くれぐれも舎本逐末にならないよう、十分お気を付けください。
数日前にR2-3の開催も正式に決定されましたね。
暫くはゆっくりしたいと思いますが、徐々に次回に向けて記事や模試の出題を再開したいと思います。
最後まで、読んでいただきどうもありがとうございました。
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